婦人科
思春期や更年期はホルモンバランスが崩れやすい時期
◎更年期
更年期症状は閉経前後の2~3年ほどがピーク
閉経前後の5年間を併せた 10年間を“更年期”といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも 症状が重く日常生活に支障を来す状態を“更年期障害”といいます。更年期の中 でも、より症状が激しい期間は、閉経前後の2~3年ほどです。 更年期障害の特徴の一つは、身体症状や精神症状など症状が多彩なことですが、 これらが他の病気による症状ではないことを確認する必要があります。更年期 障害ではない病気が疑われる場合には、該当する専門の科と連携が必要です。患者さん、ひとりひとりに合わせた治療をご提案します。
◎思春期
思春期のダイエットは注意が必要です
思春期とは、子どもが大人へと成長するための移行期間を指し、8歳頃から17、18歳頃までの時期に相当します。思春期に体重のことを気にして ダイエットをする子も少なくありません。体重が急に減少すると、月経は簡単に止まってしまいます。飢餓状態になることで脳が卵巣からのエス トロゲン分泌を休ませてしまうためです。骨量はエストロゲンの分泌に連動して思春期に急激に増え、18 歳ごろに最大量に達します。思春期に どれだけ骨量の貯金ができるかが、その後の人生の骨の健康を左右することになります。過度なダイエットで月経が止まると骨量の低下を招き、将来、骨粗鬆症になるリスクも高くなるので注意が必要です。ダイエットをきっかけに月経が3カ月以上来ないときなどは早めに婦人科を受診しましょう。
トラブルを改善し、安心して学校生活を
思春期にみられる症状・疾患としては、月経痛や無月経あるいは不正性器出血などの月経異常が多く、子宮内膜症など治療が必要な状態の場合もあります。思春期の女性にとって婦人科は受診しづらい診療科ですが、適切な治療により月経をうまくコントロールすることで月経に関連したトラブルが改善し安心して学校生活を送れる可能性があります。
女性ヘルスケア外来について
ホルモン治療、漢方薬など、個々の状況に応じた治療が可能です
女性の生涯は女性ホルモンの分泌量に伴っており、思春期、性成熟期、更年期、初老期、老年期と進みます。女性ホルモンは体調や健康に大きく関わるため、ライフステージごとに注意しておかなければならないことも変化します。特に思春期や更年期はホルモンバランスの乱れからさまざまな自覚症状が出現しやすく、妊娠、出産、育児をする性成熟期は、月経随伴症状、子宮内膜症、子宮筋腫、不妊などの悩みが多い時期です。超高齢化社会を迎えた今、家庭に留まらず、社会での働き手としても期待される女性の活躍がこれまで以上に期待される時代です。わからないこと、不安なこと、気になること、女性の悩みはライフスタイルと世代により変化します。お一人で悩まれずにお気軽にご相談ください。
ヘルスケア外来専用のチェックシート(問診票)について
こころとからだにあらわれる症状は種類も程度もさまざまであり個人差もあります。患者さんの悩みや病状を把握するために、症状について詳しくお尋ねします。また治療法の一つとして女性ホルモン製剤を用いたホルモン療法が適切で安全であるかどうかを判断するため、病歴や体質にかかわることもお尋ねします。 問診時に効率的により詳しくお尋ねできるようにチェックシート(問診票)を用意しました。ご来院時に待合室でご記入していただくか、チェックシートを事前にダウンロードしてご自宅などでゆっくり記入してご持参いただけると、診察時の手続きがよりスムーズになります。
ご相談の内容 | ダウンロード |
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月経がなくなった、更年期症状がある | 更年期症状チェックシート |
月経痛(生理痛)がひどい | 月経前症状チェックシート |
月経前の症状がつらい、月経の周期で繰り返す症状がある | |
その他の相談については診察にてご相談を承ります |
ピルの処方について
ピルは女性の身体にとってメリットが多い薬です。
■生理痛・生理不順に効果的
ピルは女性の悩みで多い生理痛・生理不順などの解決策として効果を発揮します。飲み方や服作用など、基礎的な知識を理解し、正しく使用すれば、女性の身体にとってメリットが多い薬です。日本ではピルは避妊の薬というイメージが強いですが、ニキビや皮膚の状態の改善などの効果もあります。
■治療と予防
月経困難症・子宮内膜症などの症状に対して治療と予防を目的として使用されるピルをLEPといいます。LEPの処方は、保険が適用となります。
■避妊、緊急避妊、月経移動でのピルの処方(保険外診療)
- 避妊、月経移動を目的に使用されるピル(OC:低用量ピル)
- 緊急避妊ピル(EC:Emergency Contraception)
※ご利用料金は初めての場合、2,880円からになります。薬に関しましては各院外薬局が定めた金額になります。
ピルの副作用とリスクを正しく理解しましょう。
副作用について
- 悪心(吐き気がする)
- 気分が悪くなる
- 頭痛の症状が出る
- 乳房が張りやすい
- 不正性器出血が起こる
- 気分の落ち込み、抑うつ症状、眠気
ピルを服用すると体内のホルモンバランスが変わることにより、むくみ、眠気や吐き気などのマイナートラブルが起こることがあります。個人差はありますが、多くの場合は飲み始めから2~3ヶ月以降には落ち着くため、最低3ヶ月ほどを目安に服用を続けて様子を見ましょう。
※症状がひどい場合は早めにご相談ください。
リスクについて
- 激しい腹痛
- めまい、目が霞む
- 息苦しさ、胸の痛み
- ふくらはぎの痛み、むくみ
- 激しい頭痛
血管の中で血液が固まり、循環障害を起こしてしまう症状を血栓症といいます。ピルを使用している方は、一般の方と比べて血栓症になりやすいといわれています(10,000人に3〜9人程)。タバコを吸う人(1日15本以上)や高度肥満の方は特に注意が必要です。しかし、妊娠中や産後の方が頻度が高いです。
※上記の症状がありましたら使用を中止し、早めにご相談ください。
※新型コロナウイルス感染症の時に血栓症のリスクが高くなると言われています。感染した場合は中止を勧めています。
■ピルについて、よくある質問
1)ピルを飲んだら妊娠しないのでは?
排卵を抑制することで避妊効果がありますが、内服を中止すれば3ヶ月以内に月経が再開することが多いです。むしろ子宮内膜症などで月経困難症があれば、排卵を抑制しておく方がその後に妊娠しやすいです。
2)ピルを飲んだら太る?
内服により食欲が増して体重が増えると言われています。
■種類
入っているホルモン剤の種類や量の違いで様々な種類のピルがあります。21日、28日のような同期的に内服する方法や77日、120日と連続的に内服する方法があります。それぞれに良い点、悪い点がありますので一人一人にあわせて選択しています。
乳がん検査について
乳がんは女性の羅患率第一位
乳がんは日本の女性が患うがんの中で最も多いがんです。乳がんの約90%は乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが約5~10%あり、小葉がんと呼ばれます。
乳がんは、早期の発見で治る可能性の高い病気です。早期に見つかった場合、90%以上は治ります。乳がんが進行するとリンパ節など、乳房以外の臓器にがん細胞が転移して、様々な症状をひきおこしたり、命を脅かすようになります。
マンモグラフィ
マンモグラフィとはX線を用いて、乳がんの有無を調べる検査です。乳房を板で圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影します。広い範囲の読影が可能で触診では見つからないような、ごく小さなしこりや、悪性の可能性が高い微細な石灰化を発見するのに有効な検査です。マンモグラフィは特に石灰化を見つけることに有用な検査です。X 線を利用しますが、人体へ及ぼす危険性はほとんどありません。
HPVワクチン接種のススメ
ヒトパピローマウイルス(HPV)は200種類以上のタイプがあります。子宮頸がんをはじめとするHPVに起因するがんから検出されるHPVをハイリスクHPVといい、HPV16・18・52型などが含まれます。
日本の子宮頸がんの60〜70%はHPV16・18型が原因です。国内において厚生労働省に承認されているHPVワクチンは9価・4価・2価のワクチンの3種類で、2023年4月より9価ワクチン(シルガード9)も公費で受けられるようになりました。
9価ワクチンは、9種類のウイルスを予防することを表しており、2価、4価ワクチンに比べてより多くの種類のウイルスに対して予防効果が期待できます。2価・4価ワクチンが子宮頸がんの60〜70%を予防するのに対し、9価ワクチンは80〜90%を予防できると報告されています。
9価ワクチン(シルガード9)で接種を開始する9〜14歳の女性は3回接種か2回接種を選択可能です。長期的な抗体の持続に関するデータはまだ十分ではありませんが、2回投与をした後(7カ月目)に抗体検査するとどのHPVの型も100%だったと報告されています。副反応についてはどちらも差はありません。
定期接種対象者(公費(無料)助成)
小学校6年生〜高校1年生相当の女子
HPVワクチン接種後に起きたさまざまな症状から、一時期積極的勧奨が中止されていましたが、HPVワクチン接種との因果関係がはっきりせず、2022年4月から積極的勧奨が再開されました。2023年4月からは9価ワクチン(シルガード9)も公費で受けられるようになっています。
キャッチアップ接種対象者
(2022年4月〜2025年3月まで公費助成)
対象者:誕生日が1997年4月2日〜2007年4月1日の女性で過去にHPVワクチンの接種を合計3回接種していない人。
接種期間:2022年4月1日〜2025年3月31日の3年間。(誕生日が2007年4月2日〜2008年4月1日の方も対象期間を過ぎてもキャッチアップとして2025年3月31日まで公費で接種可能)
9価ワクチン・4価ワクチン・2価ワクチン比較表
商品名 | シルガード(9価) | ガーダシル(4価) | サーバリックス(2価) |
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製造販売元 | MSD(アメリカ) | MSD(アメリカ) | グラクソ・スミスクライン(イギリス) |
HPV型 | 6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型 | 6型・11型・16型・18型 | 16型・18型 |
予防できる疾患 |
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子宮頸がんと前駆病変 |
投与方法 | 筋肉内接種(0/2/6カ月目) | 筋肉内接種(0/2/6カ月目) | 筋肉内接種(0/1/6カ月目) |
接種対象者 | 9歳以上の女性 | 9歳以上の者 | 10歳以上の女性 |
公費助成 | 小学校6年生〜高校1年生相当の女子 |
添付文書などをもとに作成
公費(無料)助成によるHPVワクチン接種スケジュール
HPVワクチン接種スケジュール
◆シルガード(9価ワクチン)
※9〜14歳の女性は初回接種から6〜12カ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができます。
◆ガーダシル(4価ワクチン)
◆サーバリックス(2価ワクチン)
子宮頸がん検診のススメ
子宮頸がんの原因はほとんどがウイルス感染(HPV)
初期の子宮頸がんは30歳代がもっとも多く、40歳代と20歳代を合わせると約8割を占めます。子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっており、性交経験のある女性の過半数において一生に一度は感染機会があります。そのうち、約9割の人は免疫力で自然には排除されますが、約1割の人においてHPV感染が長期間持続します。この自然治癒しない一部において異形成とよばれる前がん病変を経て、およそ5~10年かけて子宮頸がんに進行するのです。
つまり、定期的に子宮頸がん検診を受けることで異形成が子宮頸がんに進行する前に発見することが可能であり、結果的に子宮頸がんの予防につながるため、定期的に子宮頸がん検診をすることをお勧めしています。
また、子宮頸がんは初期であれば子宮を摘出しないで治すこともできます。子宮を摘出せずに治療を行う場合、まずはHPVの検査を行い、治療後にHPVが消失していることを再度確認します。結婚前や出産前の女性でも安心して治療をうけられます。
子宮体がんは閉経後の女性に注意が必要
子宮体がんの約80%以上は
エストロゲンが過剰に分泌されることが原因
子宮体がんの3人に2人は閉経前後の女性に認められています。女性ホルモンには、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つがあります。
子宮体がんはエストロゲンが過剰に分泌されることが原因と知られており、更年期障害の治療でエストロゲンの投与をうけたことがある人は一度、検診を受けてみることをお勧めします。
エストロゲンは使用に細心の注意を払い、うまく扱うことによって素晴らしい効果をもたらすことができますが、その反面、バランスが崩れ続けると子宮内膜が増殖し、 がんになりやすくなります。また、揚げ物やインスタントラーメンを食べる機会が多い人などは発症リスクが高くなります。
子宮体がんの症状としては、閉経後の女性では久しぶりの出血、おりもの(帯下)の増加を自覚することがありますが、年齢を問わず初期の時期は無症状の場合もあります。
検査の方法は、子宮体部の粘膜をこすって細胞をとります(子宮体部細胞診検査)。子宮頸がん検診と違い、感染や出血のリスクがあるため、超音波(エコー)検査で子宮内膜の肥厚を指摘された方などは婦人科での精密検査をお勧めします。
診療スケジュール
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 | – | – | 新田絵美子 (9時~12時) |
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午後 | – | – | – | – | – | – |
※都合により臨時休診とさせていただく場合がございます。外来のご案内から、受診時間をご確認ください。
医師紹介
婦人科 医師(非常勤)
新田 絵美子
にった えみこ
婦人科 医師(非常勤)
新田 絵美子
にった えみこ
卒業年次 | 平成17年卒 |
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専門分野 | 産科婦人科 特に子宮筋腫、子宮内膜症 |
資格等 | 日本産科婦人科学会認定 産婦人科指導医・専門医 日本周産期・新生児医学会認定 周産期(新生児)指導医・専門医 日本超音波医学会認定 超音波指導医・専門医 |
四国新聞2022年9月3日
健康ラボに掲載
四国新聞2022年9月3日 健康ラボに掲載