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健康新聞 定期連載〜第2回 甲状腺疾患〜

2024年05月06日

西山典子副院長が健康新聞の取材を受けました

女性のためのMEDICAL NOTE(メディカルノート)、第2回目は甲状腺疾患。女性がかかりやすい疾患や健康トラブルはライフステージによって変化します。病気になってからではなく、早期発見・予防につなげるためにも、女性特有の病気について理解を深めましょう。

第2回 甲状腺疾患 〜女性のためのMEDICAL NOTE〜 
医療法人 西山記念会 MIRAI病院 西山 典子副院長

 

ホルモン分泌量の異常が原因
加齢と共に発症率が上昇傾向

 日本で推定500~700万人が罹患(りかん)しているとされる甲状腺疾患。身近な病気にもかかわらず、「だるい」「イライラする」といった少しの不調を、年齢や女性ホルモンなどのせいにして、発症に気が付かないケースが少なくありません。甲状腺とは、喉仏の下にあり、チョウのような形をした小さな臓器。そこで分泌される甲状腺ホルモンは、体全体の新陳代謝をコントロールする働きをしています。胎児や子どもの発育に大切であることはもとより、脳や胃腸の活性化、体温調節などの役割があり、健康を維持するためにも重要な働きをしています。

 しかし甲状腺ホルモンの分泌量が、何らかの原因で異常を来すと、疾患につながります。その代表的なものに甲状腺ホルモンが過剰になる「バセドウ病」と逆に下してしまう「橋本病」があります。いずれも自己免疫疾患の一つで、好発年齢は20~50代の女性に多く、男性の4倍程度の発症率と言われ、加齢とともに増える傾向にあります。

 バセドウ病は、自分の体を攻撃する抗体(自己抗体)が甲状腺を刺激するため、大量の甲状腺ホルモンが分泌されることで、動悸(どうき)、息切れ、手足の農え、汗をかくなどの症状が現れ、頻脈や腹の異常、甲状腺が腫れます。治療は、薬物療法、放射性ヨウ表内用療法(アイソトープ治療)、手術です。多くの場合は、抗甲状腺薬を内服します。

 一方の橋本病は、自己免疫異常により、甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまいます。首が腫れますが気が付かないことも多く、冷え、月経不順、肌の乾燥やむくみ、便秘などの症状が現れます。更年期症状や自律神経失調症の症状ともよく似ているため誤認しがちです。甲状腺機能低下症を認める場合は、甲状腺ホルモン剤を内服します。

 原因は、性別が関与するだけでなく、妊娠、出産などの環境要因と遺伝的要因とが合わさって発症する多因子性疾患です。バセドウ病も橋本病も良性疾患ですが、「甲状腺クリーゼ」に陥ると死に至る恐れがあるため、治療中の方は定期的な受診を欠かさず、内服薬が途切れないようにしましょう。気になる方は、血液検査と超音波検査で診断がつくので検査を受けてみるのもいいでしょう。

 


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